エンコルピオのブログ

日々のあれこれと趣味のことを徒然なるままに記す

タイパと倍速視聴

昨日の日経夕刊で、北村匡平という人(東工大の准教授らしい)が、2020年、大学の映画の授業(大学は東工大?映画の授業って何?という疑問はあるが)が有名な監督の作品を見たことがあるかアンケートをとったそうだ。


ヒッチコック映画に関しては5%で、前年も同様だったそうだ。


更に日本映画の巨匠5人について聞いたところ、黒澤明94%、溝口健二と小津安二郎が16%前後、成瀬巳喜男と木下恵介は5%弱だったそうだ。


大学で映画の授業を取るくらいだから、全く0ということはないだろうが、世界のクロサワを除いてそんなものかなと思う。


どうやって見たかと尋ねると、動画配信サービスがほとんどで、映画館で見ること極めて少なかったそうだ。
確かに現代では、それらの巨匠の作品を大きなスクリーンで見る機会はあまりないのは理解できる。


ただそこで指摘されたのは、大量に情報量を消化するための倍速視聴の在り方の問題だった。


私も正直言って様々な局面で、倍速視聴をすることはある。
例えばシンポジウムやセミナーで本題と離れた講師の経歴やら映画の本筋前部分やエンデイングロールを2倍速又は0.25ピッチで通常モードから早くすることはある。


それは日常生活の中で限られた時間を有意義に過ごしたいことの顕れなのだろう。
それをタイパと呼ぶのならば、私もタイパを気にしているのだと思う。


しかし、それがファスト映画という映画を10分程に編集して勝手に公開するような、安易に著作権を侵害するような行為を助長するような鑑賞方法は厳に慎むべきだと思う。


ただ、このようなファスト映画という違法な動画投稿がなぜされていたかと言えば、ニーズがあったからということだろう。


しかし本来映画はその編集も含めて著作権者の作品として尊重されなければいけない。


昨年11月17日東京地裁は、投稿者2人に対して5億円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。
また2人は既に著作権法違反罪で有罪が確定している。


更に本来映画はもっと余裕をもって見るべきもので、拙速に省略できるものではないはずだ。
それが本来もっと味わえる余地を抹消してしまったのなら、タイパの目的を失うかもしれないなと危惧した。
そのために作品選びは慎重にすることが大事だなと思う反面、若い時は多くの作品に触れることで目を養う意味もあるなと同情的にもなった。
その意味では目利きとなるような存在を複数見つけておくのはいいかなと思っている。


確かに倍速視聴したくなるような映画に当たることもあるから、一概には否定できないが、やり方に工夫やメリハリは必要だろう。
いずれにせよ素晴らしい才能にあふれた映画に出会うことは大きな喜びで、それを失うことは大きなロスになってしまうのだから。