エンコルピオのブログ

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村上RADIOとプーチン

1月29日に放送された村上RADIO(村上春樹がDJをしている番組)をラジコで聞いていたら、最後に印象的だった話をしだした。


対ウクライナ戦争に出征した息子が戦死したある母親に面と向かって、プーチンが言い放った言葉についてのコメントだった(村上氏は「ニューヨークタイムズ」の記事で知ったらしい)。


以下プーチンの言葉


「ロシアでは年間、何万人もの人がアルコール濫用や交通事故で命を落としています。あなたの息子さんは、ウォッカの飲み過ぎなんかで死ぬより、ずっと意味ある死に方をしたのです。」


この言葉に対して村上氏は以下のようにコメントしている。


「うーん、まったくすごいことを言いますよね。
でもこういうのって、巧妙なロジックのすり替えなんです。だってウォッカや自動車は本来、人を殺すために作られたものじゃありません。あくまで付随的な、アクシデンタルな結果として、不幸にして人が亡くなるという結果が生まれるわけです。
でも戦争はそうじゃない。戦争は基本的に、人を殺傷することを目的として行われる行為です。そういう、本来は同じレベルに置くべきではない事柄を並べて比較することで、ものごとをねじ曲げて正当化していく。これは何もロシアだけではなく、戦争に携わる国の指導者がしばしばおこなうごまかしです。
そして彼ら自身は決して戦場には行きません。みなさんもそういう連中に言いくるめられないよう、じゅうぶん気をつけてくださいね。」


多少ユーモアも交えているが、かなり皮肉たっぷりのコメントで普遍的な教訓を含んでいる。


ちなみに私はTV報道で実際にプーチンが多くの母親らしき女性たちに向かってこのようなセリフを話すの映像を見た。


プーチンは諭すように穏やかな物言いではあったが、このセリフを聞いた時、息子の安否を心配する彼女たちに対して余りに無神経で、頓珍漢な話なので、これを聞いた母親たちがどんな顔をするのだろうと思いながら見たが、当然彼女らはやや戸惑うような表情の者もいたように思うが、憤怒の表情や悲哀の表情をその場で表す者はいなかった。


そのようなことが出来ないような場であるのだろうし、そのような態度を表す女性をそもそも人選しないのだろうとも思った。


全てが予定されたガス抜きの演出なのだろうが、実際に進行している現実の陰で本当のドラマがあるのだろうと思いを馳せた。