エンコルピオのブログ

日々のあれこれと趣味のことを徒然なるままに記す

プログレ5大バンドあれこれ YES編 PART3

4.旧有力メンバーの復帰による脱退


Rウエイクマンの脱退で後任として加入したPモラーツは、「海洋地形学物語」に続く難解な作品と言われる1974年「リレイヤー」に参加する。
彼はツアーでイエスの過去の難解な楽曲のマスターに相当苦労したらしい。
そして「リレイヤー」では部分的に才能を感じさせるパートを演奏するのだが、如何せんRウエイクマンのようなわかりやい派手さ華やかさがない。


もちろん「リレイヤー」自体1曲目の「錯乱の扉」のように戦争の破壊や混乱といった重いテーマを扱っている以上華やかさとは程遠い楽曲なのだから当然と言える。
むしろ2曲目の「サウンドチェイサー」のようなクールなサウンドを構成するジャズ的なキーボードは彼がもたらしたものだろう。
しかしイエスのサウンドは単にジャズロックで終わるものではなく、前作の「海洋地形学物語」をもっとアグレッシブにしたコーラスを加味したり、各メンバーに相乗効果を求める貪欲さがある。
他のメンバーが過去の楽曲を演奏する上で前任者と比較してしまったことはやむを得ないかもしれない。


彼が脱退するのは結局Rウエイクマンが復帰することによる。
「リレイヤー」の次のアルバム「究極」に収録される予定の数曲(デモテープ)を、Rウエイクマンに聞かせることで、イエスが「海洋地形学物語」、「リレイヤー」と難解な方向性から転換しようとしたことを知らせたのだった。


またこれはこの時代パンクロックムーブメントによって大作主義のイエスのようなオールドウエーブに対する批判を跳ね返す商業的な成功(短い曲でシングルヒットを狙うような)の指向が働いたかもしれない。


それはRウエイクマン復帰作1976年「究極」の1曲目のカウントから始まるロックンロールナンバー"Going For The One"から感じ取れる。
またシングル"Wonderous Stories"はトップ10に入るヒットとなった。


また協会のパイプオルガンを全面的に使った"Paralells"は正にRウエイクマンに求めていたわかりやすいクラシックとロックの融合を具現化した曲と言える。


ただ本アルバムで白眉の作品は"Awaken"という15分を超える楽曲である。
この曲に関してはPモラーツが解雇される前の「究極」制作のためのリハーサルで関与したと発言していてSハウも認めているそうだ。
この曲は鮮烈なピアノソロから始まり変拍子満載の複雑かつ繊細な構成でイエスでも人気のある楽曲だ。


本作でメンバー交代ではなく大きな変化があった。


第1に2ndアルバム「時間と言葉」から「リレイヤー」までのプロデユーサーで6人目のイエスと言われたEフオードが退き、セルフプロデュースとなったことだ。
"Turn Of The Century"を聞くとバランスの良さから余り影響は大きくないように感じる。
アルバム全体を通してもむしろロックンロールバンド(元々そうなのだが)の躍動感を感じる。
それが一つの狙いだったわけでもある。


第2に「こわれもの」以来「リレイヤー」まですべてのアルバムカバーをデザインしていたRディーンがヒプノシスに変わったことだ。
これは当時イエスファンにとっては衝撃的だった。
Rディーンのデザインはどこか惑星の(昔の地球あるいは未来の地球かもしれない)ありそうであり得ない植物や動物を登場させつつ統一的な色彩で描く幻想的な絵画だ。
この絵画のタッチ自体が好きになって彼の絵画集を買ってしまったほど。
それがピンクフロイドのような写真のコラージュのアルバムジャケットになってしまった。
イエスの従来のコンセプトからの解脱?リスタートの意気込みはわかるのだが・・・。
次回作1978年「トーマト」でもヒプノシスが担当するが、その後イエス最大と言ってもいいメンバーチェンジによってまたRディーンのデザインが復活する。


閑話休題 イエスを脱退したPモラーツは1978年以降1991年までムーデイブルースに在籍、その間にBブルフォードとドラムとピアノというアルバムやコンサートをしている。


更にイエスのライブアルバム1980年「YESSHOWS」で2曲(なんと大作「錯乱の扉」と「儀式」)を演奏しています。


ちなみにPモラーツは13年間いたMブルースよりも3年間のイエスの在籍時が濃密で楽しかったと後述している。
よかった。よかった。


続きはまたの機会に。