エンコルピオのブログ

日々のあれこれと趣味のことを徒然なるままに記す

極私的映画録 2023第3四半期(7月~9月)

相変わらず自分の興味のアンテナに従ってみるスタイルは恐らく在宅勤務が基本となっている現在のライフスタイル(もちろん在宅勤務中は見ません。念のため。)にはちょうどいい。


映画館の大画面で見る映画は迫力もあり音響もよく、同時に多くの観客が暗闇の中で同じものを見る一種儀式性のある世界で決して嫌いではない。


ただ自分が見たいと思う、関心が向く映画が必ずしも映画館で上映されているものではないというのが現実だ。


個人的には自分の見たい映画を上映する映画館を保有できれば最高なのだと思う。
実際、個人シアターにお金を注ぐ人が多くいることもよく理解できる。


さて、第3四半期(7月~9月)は計33本の映画を見た。
前回(2023第2四半期)と同様に記載する対象は今年公開されたものに限らず、機会あって観たもので製作年度、公開年度は無限定だ。
その中で自分なりに高評価だったもの(再見のものは〇を付した)を以下に記録した。
個々の作品についての詳細なコメントは、キネノートさんに記録してあるのでこちらには書かない。


図書館の貸し出しに感謝したい。
カッコ内の年は製作又は公開年を記す。


7月
ブラッククランズマン(2018)
チャップリンの独裁者(1940)〇
朝が来る(2020)
1917 命をかけた伝令(2019)


8月
怒りの葡萄(1939)
東京裁判(1983)
ミステイック・リバー(2003)


9月
リンカーン(2012)
ライムライト(1952)



今更ながら驚くのは「チャップリンの独裁者」と「怒りの葡萄」の製作年から日本での公開の年月のギャップだ。
前者の日本公開は1960年、後者は1963年。
それらの作品が製作された頃の日本においては同盟国(ナチスドイツ)に対する配慮と敵対国の製作でかつ反資本主義・労働者寄りの作品ということで今では名作と評価されるような作品(前者はC・チャップリン、後者はJ・フォード監督)でも公開されなかったという歴史的事実。


「リンカーン」は、スピルバーグの追い続けるテーマの1つ平等ないし奴隷解放の原点となるヒーローであるリンカーンの政治家としての偉大な業績である憲法修正13条の奴隷的拘束の禁止と法の下の平等を達成するまでの泥臭い政治的駆け引きと南北戦争の背景を見事に描いた地味だが志の高い見事な作品。
その人種差別を禁止しながらも、未だに残る白人優位思想から生まれたKKKの実話をシニカルな視点で笑いとばす知性を感じさせるスパイク・リー監督の傑作「ブラッククランズマン」。
この白人優位思想を根強く支持する南西部を中心とした階層を、自らの支持基盤に利用するトランプの影を感じさせるエンデイングは強烈なメッセージ。
アメリカの創世期と現代に渡る人種差別の歴史は相当に根深いものを感じさせる。


イーストウッド監督の「ミステイック・リバー」の悲劇の根底にまさかジャニーズ問題と共通する未成年男子に対する性加害があるとは驚きだった。